出 発(たびだち)(エピソード05)

ぼくとクッシーは年が一回り以上ちがうけど 、住んでる世界もちがうかなと思う。
パラレルワールドの存在をぼくは信じているんだけど、それとはちょっときぼがちがう「小世界」みたいなものがあって、それはちょうどシャボン玉のあわがいっぱいちらばっているような環境の中のあわのひとつひとつがぼくやクッシーの世界なんだと思う。

あわどうしはときどきくっつくんだけど、そのくっついた部分がぼくとクッシーの接点なんじゃないかなあ・・・とおもうこのごろです。

新潟県の富山よりに柏崎という市があって、なぜか今年に入ってからぼくとクッシーは何度も柏崎にいくはめになった。もちろんほとんどびじねすなんだけど、クッシーはくるまでとーくまでいくことがあまりないみたいで、毎回みょーにうきうきしている。

その日は快晴で空が青く、ドライブにはもってこいの日だったけど、今回はほとんどクッシーのようじで、ぼくは今回はつきそいみたいなきらくなかんじで柏崎行きをきめたのだった。

もう何回かクッシーやたいちょー(注:1)なんかと柏崎へ行ってるので、クッシーも運転は慣れてきたみたいで意外とすんなりこうそくどうろに入れた。

前みたいに、こうそくのぶんき点にあるきーろいドラム缶みたいなものにぶつかりそうになって危機一髪回避!などということももうないだろう。

ぼくはたいちょーからのメールで「そーほー」のけいじばんの不正書き込みがあることをしっていたので削除しようとおもい、「のーとぱそこん」に「ぴーいん」をさして「いんたーねっと」につなげようと必死だった。

「不正カキコがあったってしってたあ?」とぼくはクッシーに話しかけました。

「うん、さっきでがけに見てきた。」

「えーなんでさくじょしてくれなかったん?」

クッシーと、ぼくと、しょーちゃん(注:2)で「そーほー」のほうむぺいじをあたらしくつくったばかりだったので、ぼくとクッシーは「かんりしゃもーど」というめんどくさいぺーじにはいる「ぱすわーど」をしっている。

「うーーーん・・・すぐでかけなければ・・・とおもった・・・」

その日、ぼくはクッシーの家まで迎えに行ったのだが、あわてて出てきた様子もなかった。
クッシーは、ぼくが時間がないときでも、ぼくがいくと家の中にあがれ・・・とはいわないで

「おちゃでも・・・」とか「こーひーでも・・・」とか語尾はいつもごにょごにょというかんじで聞き取れない話し方だかあいさつだかをする。

(げんかんでのめってかー?)

ぼくが聞き取れないのではなく、けっきょくそれしかいってないような気もする。それに3回さそわれれば2回は断っているのでクッシーもしゃこーじれーになっているのかもしれない。

書き込み削除するのに一分もかからないだろうに・・・とぼくはこころのなかでさけんだ。

仕方がないのでなかなかネットにつながらないのーとぱそこんにつかまっているとクッシーは黙って前をむいて運転している。周りの雰囲気はいつもより車の台数が少ない気がした・・・というよりほとんど走っていない。(注:3)

なにかいやな予感がした。

のーとぱそこんから目を離してふと見上げたぼくの目には鮮やかな緑色のバックにに白文字で「磐越道」とかかれた看板が映り、それはあっという間にぼくの頭上を跳び越して視界から消え去った。

「・・・・・・・・・・・・・」いっしゅんぼくの顔から血の気が引いた。


「クッシー!ばんえつどうだぁ!」

クッシーはいっしゅんぼくの方をちらと見たが(それがどうした?)といわんばかりにまた前に向き直り運転を続けている。

よいこのみんなはしってるとおもいますが「にいがた」から「かしわざき」へいくには高速道路は「ほくりくどー」をいかなければなりません。 (イトーヨーカドーはクレヨンしんちゃんではサトーココノカドー・・・そんなことはどうでもいいですね)

「クッシー反対方向に行ってるぜ!」
ぼくはまさかドラマやギャグじゃあるまいし、そんなことが現実でおこりうるのか頭のなかがそのことだけでいっぱいになった。

(まさか・・・まさか・・・そんなぎゃぐがこの世に存在するのか?)
(やってくれたぜ・・・)

「クッシーひきかえせ!」
ぼくはその時点では完全にパニくっていた。クッシーはスピードを緩めるでもなく、おそらく10分前と同じ格好で運転にいそしんでいた。

「高速道路はUターンできません」とクッシー。
(そんなことはわかってる!)

「サービスエリアに入るか・・・(ぼそっ)」とぼく。
(まてまて、そんなことしてもだめだ! おちつけおちつくんだ!)

パーキングエリアの看板がいっしゅんあらわれてすぐに消えた。クッシーはパーキングエリアに入りそうになった。

「パーキングエリアに入ってどうするんだ?ひきかえせないぜぃ!」とぼく。どうやらクッシーはぼくのつぶやきをうのみにしたらしい。

「じゃ、どーするんです!」とめずらしく少し怒り声を上げたクッシー。

「このまま次のインターまで行くしかないな・・・」(注:4)

しばらく沈黙が続いた。ふと、クッシーが
「次のインターで降りないでこのまま柏崎にいけないかなー?」といつものぽーかーふぇいすにもどって言った。

だんだん落ち着きをとりもどしてきた・・・というよりあきらめの境地にいたったぼくは・・・

「そううだねぇ・・・磐越道だから・・・郡山じゃんくしょんから東北道にはいって東京方面に向かい・・・関越道から長岡じゃんくしょん経由で行けばなんとかなるかな・・・」

「行けないわけじゃないんですね・・・」うれしそうなクッシー。

「このまま走り続ければ明日の朝くらいにはつくかなぁ・・・(まったく根拠はない)高速料金いくらかかるかなぁ・・・それまでくらいあんとは待っててくれるかなぁ・・・・(以下フェードアウト)」

長いような短い時間がすぎてぼくたちは次のインターについた。クッシーはぼくからカードを受け取るとりょーきんじょのおじさんに手渡した(注:5)戻ってきた領収書を見てクッシーは
「なーんだ、たいしたことないや」とのたまった。それは何百円でしかないのはたしかなのだけれど・・・

助手席からぼくが口やかましいくらいにUターンの指導をしたおかげで、縁石、その他に車をぶつけるでもなく、クッシーとぼくは今来た道の反対車線をようやく柏崎へと向かうことができたのだった。

 

おかあさん・・・ぼくは・・・道がどこまでも続いていることを・・・今日知りました・・・

・・・つづく

注:1 たいちょー そーほーのなかま。一度、クッシーと私とたいちょーで柏崎まで行ったことがある。行きはたいちょーは後部座席で寝ていたけれど、帰途は夜になり、たいちょーが運転手をしてくれたが高速道路の入り口がなかなか見つからなかった。迷子になったのである。たいちょーが「あそこだ!」と叫んださきにあったのは闇の中でそこだけライトに照らしだされた柏崎原発の入り口のゲートだった。
注:2 しょーちゃん そーほーのなかで年齢は一番若いくせに、考えていることがいちばん「じじくさい」やつ。ちなみに私が一番年上かな?
注:3 「磐越道」は新潟-福島を結ぶ高速道路、「北陸道」は新潟から長岡を経由して北陸3県へ向かう高速道路、「関越道」は長岡から東京(練馬)までの区間です。平日の昼間なぞ、北陸、関越道に比べて磐越道は車の数が圧倒的に少ない。
注:4 次のインターがどこだったか、どれくらいかかるか、そのときはまったくわからなかった。というよりパニくっていたので亡失してしまっていた。後でわかったのだがそれは「新津インター」でした。料金も時間もたいしたロスではなかったんだけど・・・。
注:5 柏崎ツアーの何度目かの料金所でのこと、私がカードをクッシーにわたし、料金を支払い、カードと領収書をもらったあと、クッシーは平然と領収書だけ私によこし、カードを自分の胸ポケットにしまいこんだ。いつ間違いに気付くかと私はしばらく黙って様子を見ていたのだけれど、たまらなくなって「クッシー!カード!」と叫んだらクッシーは「あっ」と言っただけであとは黙ってカードを私に渡しただけだった。しかも運転中なので前をむいたまま・・・。

※この物語は一部フィクションであり、実在の人物、団体名等とは関係ありません…が大部分、本当にあった話です。

-- 祐 筆 --